無期雇用派遣とは何だったのか ~着任編~
終わらない8/31に終止符を打つ
就職活動再開の動機はこれに尽きる。
『ニートは8/31が毎日続く感覚』とは言い得て妙だと思う。
新卒で入社したメーカー営業職を5ヶ月で飛んで早二年が経とうとしていた
mifune-fumifumi.hatenablog.com
キオスクレジ打ちの常勤アルバイトとしてフリーター生活に落ち着いていた僕だったが、内心『手付かずの宿題に後ろ髪引かれる8/31の小学生』に似た焦燥があった。
あと、小慣れたバイトに飽きてやめたくなってた。笑
2019年も秋になり、オリンピックイヤー無職を回避したい気持ちが高まった頃、もうどこでも入れるところにさっさと決めようと禁じ手の『エージェント丸投げ就活』による早期決着を図る。
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(参考文献)
「働きたくない」「人と話したくない」を前面にアピールしエージェントを困らせる25歳男性。
前者はともかく後者を考えると、方向性は必然的に技術職へ傾いてゆく。
そんな中でエントリーしたのが無期雇用派遣という雇用形態であるA社だった。
「つまり、ねこどらさんには弊社の正社員として派遣先にて就業して頂きます。万が一派遣契約が満了した場合でも、弊社の正社員ですから次の就業先を相談の上決めていくこととなります。」
(ナルホド!やらかしてクビ切られてもまた新しいとこ探してくれんのか!なんか気軽に働けそう!)
面接はふるいに掛けるというよりほとんど雇用形態の説明だった。
後日内定、快諾。
数週間後、僕は群馬県内の工業地帯を車に揺られていた。
「今日は練習通りにアピールしてもらって、思ったままに質問しちゃってください。仕事内容については説明があると思いますが、主に…」
ハンドルを握るA社の営業スタッフが、これから向かう工場での簡単な業務内容を伝えてくれる。
『業務確認』と称しこうして就業前に派遣先(候補)に訪れる訳だが、これが実質面接で、普通に落とされる。
(群馬のこの工場には落ちました)
「ねこどら君は前職が営業だったんだね、まあ人生どうにかなるよ、僕も大学を留年しているしね」
営業さんは、およそそんな挫折を感じさせない爽やかな笑顔で言う。
帰りの車内は行きの緊張感もほぐれ、どこか弛緩した雰囲気だった。
「でも、なんですぐやめちゃったの?いや、言える範囲でいいんだけどさ」
「いや〜、なんでかよくわかんないんスけど、なんか嫌ンなって関西に飛んじゃったんスよw」
穏やかな空気感につられて軽口を叩くと、暫しの間を置いて営業さんは苦笑する。
「…それ、ここではマジでやめてね。笑 担当営業が派遣先にめっちゃ頭下げることになるから…さ…」
ハイ!w 気をつけます!w
その後、埼玉上尾の工場にも息をするように落とされる。
師走も中盤に差し掛かった頃、面接練習および今後の日程調整のため、面接でも訪れたA社の本社ビルに赴く。
「どう?今の所2社くらい受けて…」
面談にて、僕は群馬や上尾周辺があまりにぴえんこえて辺鄙だったことを思い出す。
「う〜ん…なんていうか…関東にこだわってド田舎に住むより、いっそ遠くてもそこそこ暮らしやすいトコがいいかなって…」
「うんうん、確かにね。Xさん(群馬のとこ)の周りとかちょっと凄いもんね、うんうん」
その答えを待っていたとばかりに紹介されたのは、宮城県の工場だった。
「東北だとご実家からはかなり離れるけど…大丈夫?」
「はい!頑張ります!(島村卯月)」
「所在地はK市というところで…」
というので、Googleマップを開き、検索する。
「どうかな、田舎すぎるのは嫌だもんね。まぁ、ねこどら君がどの辺りを田舎と思うかなんだけど…コンビニやスーパーなんかはあるし、あ、「まねきねこ」もあるね。」
なるほど。
コンビニ、確かに多数。
スーパー、確かに多数。
まねきねこ、ある
「…」
「良さそうなら、話を進めるけど…どうかな?」
「…はい!頑張ります!(島村卯月)」
僕はあまり考えずに島村卯月になる悪い癖がある。
在来線と新幹線を乗り継いで3時間、名もなき小さな駅にて担当営業の方に拾って頂き、車に揺られること15分でようやく就業先(仮)に到着である。
「ねこどらさんは94年生まれですか、同い年ですね。まあ、同い年コンビってことで元気よくいきましょう。笑」
道中、同じ黄金の94年世代(大谷翔平・羽生結弦・ねこどらを輩出したゴールデンエイジ)の営業・Kさんに励まされながら面接に向かう。
面接の内容は代わり映えしないいつもの内容。早期退職の理由も適当に繕って準備したテンプレートでかわしていく。
「では、休みの日は何をしますか?」
うーん…終わらないお盆休みを500日以上継続している僕は
「狂ったようにポケモンGOをしています」
とも言えないので
「散歩です」
と適当に答える。
「さ、散歩?!?!w」
散歩好きの25歳大卒無職はいささか不審に見えたようだが、結局この工場で僕は初めての”””内定”””を頂くことになる。
一体どこを評価されたのかさっぱり分からないが
2019年12月22日夜
大量の荷物を抱え、再び3時間の道のりを経て僕はK市に降り立った。
何が何でも年内から就業を開始せねばならない一方、引っ越し業者は年明けにならないと動けないとかで、当分ホテル暮らしなのだった。
日没後の田舎は暗い。そのうえ四方を山に囲まれたK市は山おろしの冷たい風が吹きすさび、視覚的にも体感的にも恐ろしいほどの寒さを感じる。
(こんな暗闇で急に狂人(やばんちゅ)に襲われら死ぬな〜…でも、そもそも人がいねえか、ハハハ)
一人おもんないことを考えて気を紛らしながら、ホテルを探し彷徨い歩く。
明日からは早速就業開始だ。
こんなところで一人仕事なんてできるのか?
でも、一人暮らしはちょっとたのしみだな
不安と期待が入り混じる中、それでも僕は過去の失敗を繰り返すまいと決意を新たにするのだった。
まあ、無理だったのですが…
生活編に続く